
「うちの資料を AI に読ませて、聞いたら答えてくれるようにしたい」
社内で AI 担当を任された方から、いちばんよく聞く相談です。そして実際に始めてみると、最初につまずくのは AI の性能ではありません。資料の置き場所です。
- 大事な資料が、社員それぞれのマイドライブに散らばっている
- 「見積書_最新」「見積書_最新_修正」「見積書_最新_修正2」が並んでいる
- 退職した人のフォルダに、何が入っているか誰も知らない
人が探しても見つからない資料は、AI にとっても見つけにくい資料です。この記事では、Google ドライブの共有ドライブを「AI にも人にも探せる形」に整える3つのルールをまとめます。
まず、いまの状態と目指す状態
| いま(よくある状態) | 整えた後 | |
|---|---|---|
| 置き場所 | 社員ごとのマイドライブに分散 | 会社の共有ドライブに集約 |
| 持ち主 | 作った人個人 | 会社(チーム) |
| 退職・異動のとき | 引き継ぎ漏れが出やすい | 資料は共有ドライブに残る |
| ファイル名 | 「最新」「修正2」など人それぞれ | 決まった順番で、日付と内容が分かる |
| 古い資料 | いまの資料と混ざっている | 「過去分」として分けてある |
| AIに聞いたとき | どれが正しい版か判断しにくい | 元の資料を確かめやすい |
共有ドライブに置いたファイルは、作った個人ではなくチームのものとして扱われます。社員が辞めても資料は残るので、AI の前に、属人化対策としても効く整理です(担当者が辞めるときの引き継ぎの話は「ベテラン社員が辞める前に——属人化業務をAIに「聞き書き」で残す3ステップ」でも書いています)。
ルール1:入口は「探すときに最初に思い浮かべるもの」で分ける
フォルダの分け方で迷ったら、**「その資料を探すとき、最初に何を思い浮かべるか」**で決めます。
| 資料の種類 | 最初に思い浮かべるもの | フォルダの分け方の例 |
|---|---|---|
| 請求書・領収書 | いつの分か | 経理 → 2026年度 → 10月 |
| 見積書・提案書 | どの取引先か | 営業 → 取引先名 → 案件名 |
| 工事・製造の記録 | どの案件か | 案件 → 案件番号_現場名 |
| 社内ルール・マニュアル | 何の手順か | 総務 → マニュアル → 業務名 |
ポイントは、階層を深くしすぎないことです。3段くらいまでに収めると、人もAIも迷いにくくなります。そして決めた分け方は、A4一枚に書いて共有ドライブの一番上に置いておきます。
ルール2:ファイル名は「日付_内容_取引先」の順番に揃える
ファイル名は、AI が資料を探すときの大きな手がかりです。順番を決めて揃えるだけで、探しやすさが変わります。
| ばらばらな名前 | 揃えた名前 |
|---|---|
| 見積書_最新_修正2 | 20261014_見積書_取引先名_案件名 |
| 会議メモ | 20261014_議事録_定例営業会議 |
| マニュアル新しいほう | 20261001_マニュアル_受注入力_v2 |
- 日付を先頭に:並べたときに時系列になり、「最新」と書く必要がなくなります
- 「最新」「修正」は使わない:版は日付か「v2」で表します
- 古い版は消さずに「過去分」フォルダへ:いまの版と混ざらないようにします
取引先から届く請求書のように、毎月たくさん来る資料は、名前付けと振り分けそのものを自動化することもできます(「請求書PDFを、GmailからDriveへ自動で振り分けて受領台帳にする」)。

ルール3:「誰が見てよいか」を共有ドライブ単位で分ける
AI に資料を読ませるときに一番気をつけたいのが、見てはいけない人に見えてしまうことです。
共有ドライブは、ドライブごとにメンバーを決められます。そこで、見てよい人の範囲ごとにドライブを分けます。
| 共有ドライブ | 見られる人 | 入れるもの |
|---|---|---|
| 全社共有 | 社員全員 | 社内ルール、マニュアル、会社案内 |
| 営業・案件 | 営業と現場の担当者 | 見積、提案書、案件の記録 |
| 経理・人事 | 社長と担当者のみ | 請求書、給与、評価に関わるもの |
ただし、ドライブを分けるだけで安心してはいけません。マイドライブから移す前に個別に共有していた相手や、「リンクを知っている全員」の設定が残っていることがあります。移したら、大事なフォルダの共有相手とリンクの設定を一度見直し、必要なら管理者側で「メンバー以外への共有」を制限しておきます。
Google ドライブの中で使う Gemini は、使う社員がもともと見られる資料の範囲で答える仕組みです(ほかの AI サービスに資料をアップロードする場合は、そのサービス側の設定を別に確認してください)。だからこそ、「誰が見てよいか」を先に整えておくことが、AI を安心して全社に広げる前提になります。
今週からできる進め方
一度に全部やろうとすると止まります。次の順番で、小さく始めてください。
- 1部署・1種類の資料を選ぶ:たとえば「営業の見積書」だけ
- 共有ドライブを1つ作り、ルール1〜3を当てはめる:分け方を A4 一枚に書いて一番上に置く
- よく使う資料だけを移す:過去の全部ではなく、この1年によく開いたものから
- 2週間使ってみて、迷った点を直す:迷ったところが、次に決めるべきルールです
置き場所が整ったら、AI に社内の資料を読ませる段階に進めます。マニュアルを「AIに聞ける形」にする話は「誰も見ない社内マニュアルを、AIで「検索できる形」に書き直す」、案件ごとに資料をまとめて AI と話す方法は「Gemini の「案件ごとの箱」」が次の一歩になります。
社員みんなが同じルールで資料を扱えるようにする研修は、研修・講座でもご用意しています。
まとめ
- AI に資料を読ませる前に、置き場所を整えるのが近道
- ルールは3つ:入口は「最初に思い浮かべるもの」で分ける/ファイル名は「日付_内容_取引先」/見てよい人の範囲でドライブを分ける
- 1部署・1種類の資料から小さく始め、2週間で直す
「うちの資料、どこから整理すればいい?」という段階からでも大丈夫です。無料相談からお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. いま個人のマイドライブにある資料は、全部移さないといけませんか?
A. 全部を一度に移す必要はありません。まずは「よく使う・複数人で使う」資料だけを共有ドライブに移し、残りは使う機会が来たときに移す、で十分です。一気に移そうとすると止まってしまうので、1部署・1種類の資料から始めるのがおすすめです。
Q. フォルダの分け方は、部署ごとと取引先ごと、どちらがよいですか?
A. 「探すときに最初に思い浮かべるもの」で分けるのが基本です。経理の書類なら「年度→月」、営業や工事の資料なら「取引先や案件」で探すことが多いはずです。会社全体で1つの正解を決めるより、資料の種類ごとに入口を決め、その決め方を1枚の紙に書いて共有するほうが続きます。
Q. 整理したら、AIはすぐに社内の資料を正しく答えてくれますか?
A. 置き場所が整うと、AIが資料を見つけやすくなり、答えの元になった資料も確かめやすくなります。ただし、AIの答えをそのまま使ってよいわけではありません。特に金額や契約に関わる内容は、元の資料を開いて人が確認する運用にしてください。


