TSUNAGARU AI LABO
ノウハウ8

誰も見ない社内マニュアルを、AIで「検索できる形」に書き直す

社内マニュアルは、作ったあとの更新が追いつかなくなりがちです。Word・PDFのまま眠らせるのではなく、AIに「見つけやすい形(章立て+Q&A)」に書き直させる。中小企業がヘルプデスク自動化の前段として取り組める、いちばん軽い一歩をお伝えします。

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分厚いWordのマニュアルの隣で、AIが章立てを再構成し検索可能なカード形式に書き直している様子を抽象的な静物として表現したミニマルなコンセプトイメージ

「社内マニュアル、置いてあるんですけどね……誰も見ないんですよ」。中小企業の総務担当から、よく聞くセリフです。

なぜ見られないのか。理由は3つに集約されます。

  1. どこにあるか分からない(共有ドライブのどこかにあるはずだが、正確な場所を覚えていない)
  2. 開いても長い(分厚いWordファイルから、自分の欲しい1行を探す気力がない)
  3. たぶん古い(前回更新がいつか分からない。書いてある通りにやると、今のシステムでは動かない)

この記事は、そのマニュアルをAIに「見つけやすい形(章立て+Q&A化)」に書き直させるという、いちばん軽い一歩をお伝えするものです。社内ヘルプデスクボット(社内の『よくある質問』をAIに答えさせる)を入れる前段として、多くの会社で試しやすい取り組みです。

この記事の要点

項目 内容
何を作るか 既存のWord・PDFマニュアルを、AIが「章立て+Q&A形式」に書き直した見つけやすい形のファイル
前提の道具 Google Workspace(Gemini)またはMicrosoft 365(Copilot)などのビジネス向けプラン/既存マニュアル
追加費用 契約プランに含まれる範囲で始められる(プランやライセンスによって使える機能は異なる)
誰の負担が軽くなるか 総務・情報システム・新入社員教育担当。問い合わせを受ける側と、探す側の両方

Before → After

場面 Before After
マニュアルを探す 共有ドライブを部署名・年度で辿る 「経費精算 交通費」で検索して該当のQ&Aにたどり着ける
手順を確認する 分厚いWordを目次からスクロール Q&A形式で該当の1件だけ読める
内容の古さ 「これ本当に今のやり方?」と担当に確認 各Q&Aに「最終更新日」が付いている
新入社員教育 「マニュアル読んでおいて」で放置 「まず入り口の数件から」と絞れる
ヘルプデスクボット導入 マニュアルが古くて答えが濁る 書き直したQ&Aをボットが引きやすくなる

つなぎ方(3ステップ)

ステップ1:既存マニュアルを"分解"する

いきなり全部を書き直そうとせず、まず**「章単位」に分解**します。分厚いマニュアルなら、章立て(第1章・第2章……)ごとに1つのファイルにばらします。

この段階でやること

  • 対象マニュアルを1つ選ぶ(複数あるなら、いちばん問い合わせが多いものから)
  • 章立てを見て、章単位に分割する
  • 章ごとに「これは誰向けか」「どのくらいの頻度で見られるか」を1行メモする

ステップ2:AIに「Q&A形式に書き直して」と頼む

Google WorkspaceのGeminiや、Microsoft 365のCopilotに、章の本文を渡して、次のように頼みます。

この章の内容を、社員がよく聞く質問と答えの形(Q&A)に書き直してください。1つのQは1つの疑問だけ。回答は3〜5行を目安に、専門用語は日常語に置き換えてください。手順があるものは、番号付きの箇条書きで並べてください。

出てきた下書きは、必ず担当者が読み直します。そのまま公開しない。AIは"下ごしらえ"、最終確認は人、という役割分担です。特に、社内固有のシステム名・部署名・担当者名は、AIが古い情報のまま書いてくる可能性があります。ここは必ず現在の情報に置き換えます。

ステップ3:検索できる場所に置く

書き直したQ&Aは、社員が普段使っている場所に置きます。中小企業でよく使われる置き場所は、次のようなものです。

  • Google Sites / SharePoint:社内ポータルの中に検索窓付きで置く
  • Notion / Confluence:既に社内Wikiがあるなら、その中に「新マニュアル」の空間を切る
  • Google Drive のスプレッドシート:カテゴリ・Q・A・最終更新日を列にして、フィルタで探せる形にする

いちばん軽いのは、スプレッドシートで1シート=1マニュアルの形で始めることです。特別なツールを増やさずに、今日から始められます。

意外な効き所:「書き直す過程」で古い運用が浮き上がる

このやり方の副次的な効果として、書き直している最中に、「これ、もう今のやり方と違うよね」というルールが浮かび上がってくることがあります

  • 「経費精算はA課長に紙で提出」→ 今は経費精算システムで完結している
  • 「有給申請はメールで人事へ」→ 今は勤怠システムのボタン1つ
  • 「システム障害時は総務直通電話へ」→ 今はChatスペースへの投稿ルール

マニュアルを"直す"つもりが、"運用の棚卸し"になる。これは、中小企業ほど効きます。ふだん忙しくて手が付かない、古いルールの整理を、AIに書き直させる過程で強制的に進められるのです。

やってはいけないこと

AIの出力をそのまま公開する。マニュアルは「これに従って動く」ものなので、間違いがそのまま残ると、業務が止まります。必ず人が最終確認する運用を守ります。

個人情報・機密情報を無関係なAIサービスに貼る。契約している範囲のAIサービス(Google Workspace内のGemini、Microsoft 365内のCopilotなど)で完結させます。個別の外部サービスに社内情報を貼り付ける前に、会社としてのAI利用ルールを一度整理します。

全マニュアルを一気にやろうとする。1つのマニュアルを1章ずつ、数週間かけて書き直すくらいのペースを目安にします。一気にやると、レビューが追いつかず、結局公開できないまま止まりがちです。

次に効いてくる場所

書き直したマニュアルは、そのまま社内ヘルプデスクボットが引きやすい下地になります。

社内の『よくある質問』をAIに答えさせるで紹介しているように、社員が社内チャットで「経費精算の交通費はどう入力する?」と聞くと、AIが該当のQ&Aを引いて答える——という仕組みは、Q&A形式のマニュアルがあると準備しやすくなります。

さらに広い視点では、『Claude Code』を会社に導入する方法の中で「まず社内知識をAIが読める形にする」という初期ステップとして位置づけています。ヘルプデスクボットや議事録AI(会議の議事録づくりを、AIに任せる最初の一歩)と組み合わせると、社内の"聞く/答える"がまとめて軽くなります。

検索窓に「経費精算 交通費」と入力すると該当のQ&Aカードが表示されるフラットイラスト

まとめ:書き直しは、"運用の棚卸し"を兼ねる

社内マニュアルを"眠らせておく"のはもったいない。かといって、担当者が1人でWordを開いて改訂するのも、時間がかかりすぎます。

AIに「書き直しの下ごしらえ」をさせ、人が最終確認する。この分業でマニュアルは、"検索できる形"に少しずつ変わっていきます。書き直しの過程で、古い運用ルールの棚卸しも同時に進みます。

社内ヘルプデスクボットを入れる前段として、まずここから始めるのが、いちばん軽い一歩です。


関連サービス: TSUNAGARU AI LABOでは、社内マニュアルの棚卸しから、Q&A形式への書き直し・社内公開までを伴走しています。詳しくはサービス案内、講師派遣型の講座・研修もあります。

無料相談のご案内: 「うちのマニュアル、AIで整理し直せますか?」といったご相談から対応しています。無料相談フォームからお気軽にどうぞ。

よくあるご質問

Q. 既存のWord・PDFマニュアルは捨てるのですか?

A. 捨てません。原本はそのまま残し、AIが読みやすい形(章立て・小見出し・Q&A化)に"書き直したもの"を、検索用に別ファイルとして持ちます。原本の更新があったら、書き直しも同じタイミングで更新する運用にします。

Q. 社内ヘルプデスクボットとの違いは何ですか?

A. この記事は"マニュアルを直す"側の話で、[社内ヘルプデスクボット](/blog/shanai-help-desk-ai)は"直したマニュアルを社員が使う"側の話です。ボットを入れる前に、答えられる材料(=検索できる形のマニュアル)を先に用意するイメージです。順番としては、この記事→ボット、が自然です。

Q. 自社の情報をAIに読ませて大丈夫ですか?

A. 会社で契約しているGoogle Workspace(Gemini)やMicrosoft 365(Copilot)などのビジネス向けプランには、業務データの取り扱いに関する規約が整備されていることが多いですが、プラン・エディション・管理者の設定によって扱える範囲は変わります。個別の生成AIサービスに直接貼り付ける前に、契約している製品のデータ取り扱い条件と、会社としての利用ルールを一度整理してから始めるのが安心です。

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