TSUNAGARU AI LABO
事例8

「注文・在庫・請求・入金」がバラバラ、を1つの画面にまとめる — 医療系卸のケース

電話・FAX・ECの3チャネル受注、EC受注のCSV取込、銀行明細と請求書の突き合わせ。別々の場所で回っていた業務を、1つの画面にまとめる考え方。愛知県内のある医療系の卸売業と一緒に設計した、統合コンソールの取り組みを匿名の事例としてお伝えします。

中屋 茂美の顔写真

中屋 茂美

TSUNAGARU AI LABO 主宰/株式会社TRAVEL CREATE 代表

卸売業の事務所の机上を俯瞰で捉え、受注表・請求書控え・銀行明細が1つの画面にまとまっていく様子のアイソメトリックな図解イメージ

「うちは受注が3ルートから来るんです。電話、FAX、それとネット通販。それぞれ別の場所で処理していて、月末になると、どこがボトルネックか本当に見えなくなってくる」。愛知県内のある卸売業の代表から、こう相談を受けました。私(中屋)自身も、自社のレンタルスペースで複数の予約サイトを1つの表にまとめた経験があり(レンタルスペースの予約管理)、この"分散を1つに"の感覚には強い共感がありました。

この事例のまとめ

項目 内容
業種 / 規模 / 地域 医療系の卸売業 / 小規模のBtoB卸 / 愛知県内
期間 2026年夏に着手。まず統合コンソール(=経営から一望できる1つの画面)のモック(=実データで動く試作)を一緒に組み、実運用への段階的な移行を進めている段階
課題 受注が電話・FAX・EC の3チャネルに分かれ、それぞれ別の場所で処理されていた。EC 受注をシステムへ手作業で流し込んでいた。銀行入金と請求書の突き合わせが毎月まとまった時間を取っていた。売上・粗利の見通しが月末まで固まらない
設計したもの ①受注管理・在庫・出荷・請求・入金消込を「1つの画面」に統合したコンソール ②EC受注のCSV取込機能(=通販側の受注リストをファイルで受け取って一括で流し込む・重複はスキップ・商品マスタに未登録の品目は仮登録) ③銀行明細×請求書の自動照合。金額・日付・入金元名の突き合わせルールで「✅一致 / ⚠️金額差異 / ❓入金元不明」の3つに機械的に分ける下ごしらえ ④「一致だけをまとめて消込」ボタン
Before → After(設計上のねらい) 3チャネルの受注が別々の場所で管理 → 1画面に集約
EC受注をシステムへ手作業で転記 → CSVをドロップして一括取込
銀行明細と請求書を手で突き合わせ → 3分類まで下ごしらえ、人は例外だけ確認
月末まで数字が見えない → 販売KPI(=日々の売上・粗利・在庫状況の数字)+在庫アラートを毎日ダッシュボードで確認
人が確認する範囲 「金額差異」「入金元不明」に分類された行は必ず人が最終確認。EC取込で仮登録された商品は、後で商品マスタ(=取り扱い商品の登録リスト)に正式登録するかを人が判断

※内容は実際の支援に基づきます(一部匿名化)。数値の厳密な計測は今後の運用フェーズで進めていきます。

現実:会社が育つほど、"別々の場所"は増えていく

この会社は、長年FAXで来ていた注文に加え、近年ネット通販も始めています。少しずつ売り方が増えるのは自然なことですが、業務のたどり方が枝分かれしていくのは、どこの会社でも起きることです。

  • 電話注文は、担当者が受けてExcelに書き付けてから、注文システムへ入力
  • FAX注文は、印刷して机の上に積んでから、順番に注文システムへ入力
  • ネット通販の受注は、通販側の管理画面を開いて、内容をコピーし注文システムへ転記
  • 請求書はまた別のツールで発行、銀行入金の消込はネットバンキングと請求書リストを見比べながら手作業

一つひとつは"できている"のです。でも月末になると、こんな声が現場から上がっていました。

  • 「いま何件の受注が滞留しているのか、全体でパッと出せない」
  • 「今月の売上・粗利の見通しは、月末まで固まらない」
  • 「入金消込にまとまった時間を取られる」

問題は「新しいシステムを買っていないこと」ではなく、"すでにあるもの"が別々の場所で回っていて、経営から一望できないことでした。

逆転:置き換えず、"上に1枚"だけ足す

代表と決めた方針はシンプルでした。

  • 既存の通販システム・注文システム・会計ソフトは、置き換えない(人も慣れているし、取引先にも影響がない)
  • その"上"に、経営から見えるコンソール画面を1枚だけ足す
  • 通販システム → コンソールはCSVで橋を架ける(いきなりAPI連携から始めない。※API連携=システム同士が自動で会話する仕組み。ここは第2段階に置く)
  • 銀行明細×請求書の突き合わせは、3分類まで下ごしらえ、人は例外だけ見る

「既存を全部やめて、1つに刷新する」というやり方は、投資も社員の学習コストも大きい。"既存を残して、その上に統合を乗せる" が、この規模の中小企業にとっては現実的な最短経路でした。

やったこと(大枠だけ)

  1. 1画面に統合したコンソールをつくる:受注管理/在庫管理/出荷・納品/請求・入金消込/統合ダッシュボード の5つのビュー(=表示画面)を、サイドバーで切り替える形に
  2. EC受注CSV取込 機能を実装:通販システムの受注CSV(=受注一覧をファイルにしたもの)をドラッグ&ドロップで取り込む。重複行は自動でスキップ、未登録商品は仮登録して「未登録」バッジを付ける
  3. 銀行明細×請求書の自動照合:金額と日付と入金元名の突き合わせルールで、✅一致 / ⚠️金額差異 / ❓入金元不明 の3つに分類。「一致だけをまとめて消込」ボタンで一括処理
  4. 統合ダッシュボード:本日の受注・出荷・売上・粗利・在庫アラート・入金遅延件数 を1画面に。「ここだけ見れば、今日の会社の血流が分かる」状態を目指す

電話・FAX・ECの3つの受注チャネルが、1つの統合コンソールに集約されていく様子のアイソメトリック図解

起きた変化(現場での実感)

数字の厳密な計測は今後の話ですが、モックを触ってもらった段階で、現場からはこんな声が出ています。

  • 受注状況を、朝イチで一望できるようになった(3つの管理画面を順番に開いて回る必要がなくなった)
  • EC受注の"手作業取込"がなくなった(CSVをドロップするだけ)
  • 入金消込の"迷い時間"が減った(一致は一括、例外だけ人が判断)
  • 月末を待たずに、粗利の見通しが立てられるようになった(統合ダッシュボードで日次に反映)

削減した時間の使い先が大事です。この会社では、空いた時間を「取引先への新商品提案」「補助金や申請サポート業務」に振り向ける方針を代表と一緒に描いています。時間を"守る"ことより、**"何に使うか"**が事業の伸び代になります。

この事例から、他社に持ち帰れること

医療系の卸の話ですが、同じ考え方は幅広い業種に当てはまります。

  • 食品卸・部品卸・アパレル卸:受注チャネルが複数ある会社
  • BtoB のEC を持っている製造業:通販側の受注をシステムへ手作業で取り込んでいる会社
  • 月末の入金消込に時間がかかる会社:業種を問わず

構造は同じです。**「既存を残して、その上に統合を1枚乗せる」「機械は下ごしらえまで、人が最終確認」**の2点。関連する考え方はFAX注文の「転記」を、AI OCRで軽くした話請求書づくりの「転記」を無くすにもまとめました。

中小企業に伝えたいこと

「基幹システムを刷新するにはお金がない」「今のやり方に社員が慣れているから変えたくない」。この2つの気持ちは矛盾していません。むしろ、その両方を守ったまま**"経営から見える1枚"を乗せる**ことは、いまのAIとちょっとした自動化でできるようになってきました。

大きく変えるのではなく、"一望できるようにするだけで、次の一手が変わる"。この事例で一番お伝えしたいのは、その感覚です。

まず、ここから

「うちの受注チャネルは3つ以上ある」「入金消込にまとまった時間がかかる」——そんな声からご相談を受けています。TSUNAGARU AI LABOでは、業種・規模ごとに合わせて、まず1つのビューから統合を伴走します。無料相談も歓迎です。

よくあるご質問

Q. 既存のシステム(受注管理・会計)は残すのですか?

A. はい。今回のやり方は「既存のツールを置き換えず、上に1枚"経営から見える画面"を乗せる」という考え方です。EC受注はCSVで取り込む、銀行明細は照合の下ごしらえだけルールで自動化する、というふうに、既存の器を残したまま統合ダッシュボードを足していきます。

Q. 銀行明細と請求書の突き合わせは、本当に自動化して大丈夫ですか?

A. 「一致」判定だけをボタン化し、「金額差異」「入金元不明」は必ず人が確認する運用にしています。機械が下ごしらえ、人が最終判断、という分業です。全部を機械に任せてしまうと、ズレたときに気づけないので、必ず人が最終確認できる形にしておくのが大事です。

Q. どのくらいの規模から検討できますか?

A. 「受注が電話・FAX・ネットのように複数チャネルから来る」「請求と入金の突き合わせに毎月時間がかかっている」ような会社であれば、規模を問わず検討できます。今回の事例は小規模のBtoB卸ですが、同じ考え方は他業種にも当てはまります。

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