TSUNAGARU AI LABO
事例10

FAX注文書をAI OCRで自動読み取りする方法|卸売業の事例

FAX注文書のAI OCRによる自動読み取り・データ化の進め方を、卸売業の実例で解説。届いたFAXをPDFで受ける→AI OCRで品番・数量を抜き出す→人が確認、の3段です。取引先のやり方は変えずに受注の手入力を「確認」に変える手順をまとめました。

中屋 茂美の顔写真

中屋 茂美

TSUNAGARU AI LABO 主宰/株式会社TRAVEL CREATE 代表

卸売業の事務所で、FAXから届いた注文書を手にAI画面と照らし合わせる真俯瞰の机上イメージ

「注文は、今もほとんどFAXで来ます」。ある卸売業の会社で、代表からこう言われました。時代錯誤に聞こえるかもしれませんが、これは全国の中小企業でよくある現実です。

先に結論。 FAX注文書の自動読み取りは、①届いたFAXを紙に出さずPDFとして取り込む → ②AI OCRで品番・数量・納品希望日などの項目を抜き出す → ③人が画面で内容を確認して、注文システムや受注表に流す、の3段で組めます。取引先に「FAXをやめてください」とお願いする必要はありません。変えるのは、自社に届いた後ろ側だけです。

この事例のまとめ

項目 内容
業種 / 規模 / 地域 卸売業(匿名事例のため、規模・地域は非公開)
課題 取引先からの注文が今もFAXで届き、担当者が1枚ずつ注文システムへ手入力していた。品番の打ち間違いがときどき出る。毎日まとまった枚数が届き、午前中の相当な時間が入力で埋まっていた
導入したもの ①複合機の設定を変え、FAXを紙に出さずPDFで指定フォルダに保存 ②AI OCRで品番・数量・納品希望日など必要な項目だけを抽出 ③抽出内容を注文システムへ自動で下書き登録。新しい大がかりなシステムではなく、既存の複合機・スプレッドシート・注文システムにAIで橋を架ける形
期間 —(本文に記載なし)
導入前 → 導入後 注文書を1枚ずつシステムへ手入力していた → AIが読み取った結果を「確認」する工程に変わった
品番の打ち間違いがときどき出ていた → AIが抜き出した数字と原本を照合する形になり、打ち間違いが減った
午前中の相当な時間が入力で埋まっていた → その状態がなくなり、空いた時間を取引先への電話フォロー・新商品の提案準備に振り向けている
人が確認する範囲 AIの読み取り結果は必ず担当者が最終確認し、間違いがあれば修正する(AIが下ごしらえ、人が最終確認)

※数値・内容は実際の支援に基づきます(一部匿名化)。

注文書の読み取り方法を、4つ並べて比べる

「注文書をデータ化したい」と考えたとき、選択肢は大きく4つあります。数字での比較ではなく、現場で効いてくる違いで並べました。

方式 手書きの注文書 取引先ごとの様式の違い 導入の手間 人の関与
手入力(今までのやり方) 人が読むので問題なし 問題にならない 導入は不要 届いた全枚数を1枚ずつ入力する
従来型OCR(定型フォーマット前提) 苦手なことが多い 様式ごとに「どこに何があるか」の設定が必要 様式が増えるほど重くなる 設定作業と、読めなかった分の処理
AI OCR(単体で使う) 印字と手書きが混じっても実用域に近づいている 様式が違っても、項目名や文脈から拾える 比較的軽い 読み取り結果をどこかで見る必要がある
AI OCR + 人の確認(今回の型) 同上 同上 軽い(既存のツールに橋を架ける) 「入力」ではなく「確認」だけ

ポイントは一番下の行です。AI OCRを入れても、人がまったく見ない運用にはしません。人の仕事を「入力」から「確認」に置き換える。この一手間を残すことで、精度の不安と社内の合意、その両方に、同時に手を打てます。

現実:FAXは、なくならない

取引先の中には、長年の商習慣でFAX注文を使っている会社がまだあります。「電子化してください」とお願いはできても、急には変えられないのが実情です。だからといって、こちらの事務員が延々と紙を見ながらシステムに手入力する状況は、続けるべきではありません。

現場ではこんな声がありました。

  • 「毎日、まとまった枚数の注文書が届く」
  • 「1枚ずつ入力していると、それだけで午前中の相当な時間が取られる」
  • 「品番の打ち間違いが、ときどき出る」

問題は「FAXが来ること」ではなく、**「届いた後の転記作業に、人の時間を使いすぎていること」**でした。この「読み取りはAI、確認は人」という考え方そのものは、紙やPDFの内容を、AIに読み取らせて「手入力」をなくすにも整理しています。

逆転:取引先を変えず、自社の"後ろ側"だけを変える

代表と一緒に決めた方針はシンプルでした。

  • 取引先には、これまで通りFAXで送ってもらう(相手のやり方は変えない)
  • 社内に届いたFAXを、AI OCRで読み取り、注文システムに自動で流し込む
  • AIの読み取り結果は、必ず人が最終確認する

「AIに全部任せる」ではなく、**「AIが下ごしらえをして、人が最終確認する」**分業に切り替えたということです。

導入の手順:1社分から始める5ステップ

いきなり全取引先を対象にすると、様式の違いに埋もれて動かなくなります。1社ぶんで通してから広げるのが、私たちが勧めている進め方です。

  1. 取引先を1社だけ選び、その注文書を10枚ほど手元に集める。 枚数が多い取引先か、打ち間違いが起きやすい取引先を選ぶと、効果が見えやすくなります。
  2. FAXを紙に出さず、PDFで受け取る形にする。 多くの複合機は設定を変えるだけで、指定フォルダへの保存やメール転送ができます。ここは新しい買い物ではなく、たいてい設定変更で済みます。
  3. 抜き出す項目を決める。 品番・数量・納品希望日など、注文システムに入れる項目だけに絞ります。全部読ませようとすると、確認の手間がかえって増えます。
  4. AI OCRに10枚を読ませ、結果を人が確認する画面を用意する。 スプレッドシート1枚でも十分です。「原本」と「AIが読み取った値」を並べて、その場で直せる形にします。
  5. 1社で回るようになってから、他の取引先の様式へ広げる。 型ができていれば、2社目からはぐっと楽に進みます。

この5ステップは、注文書に限らず「紙で届いて、誰かが入力している業務」の多くに応用できます。自社のどの業務から着手するかの選び方は、名古屋・愛知の中小企業のための「業務自動化」完全ガイドにまとめました。

この会社で実際にやったこと

上の手順を、この卸売業の現場に当てはめると次の形になりました。

  1. FAX受信の一元化:紙で出力せず、複合機の設定を変えてPDFで指定フォルダに保存
  2. AI OCRで注文書を読み取り:品番・数量・納品希望日など、必要な項目だけを抜き出す
  3. 抜き出した内容を、注文システムへ自動で下書き登録
  4. 担当者は「入力」ではなく「確認」だけ行う(間違いがあれば修正)

大がかりなシステム開発ではなく、すでに社内にあるツール(複合機・スプレッドシート・注文システム)に、AIで橋を架けたイメージです。

AIが読み取ったFAX注文書のデータが、担当者の画面で最終確認されているクローズアップ

起きた変化(現場での実感)

数字での厳密な計測は今後の課題として、現場ではまず以下のような変化がありました。

  • 受注入力の作業時間が大きく減った(1枚ずつ入力していた工程が、AIが読み取った結果の"確認"に変わった)
  • 品番の打ち間違いが減った(AIが抜き出した数字と、原本を照合する形になった)
  • 午前中の相当な時間が入力で埋まる、ということがなくなった

大事なのは、削減した時間の使い先です。この会社では、空いた時間を「取引先への電話フォロー」「新商品の提案準備」に振り向けています。ただの人員削減ではなく、"人にしかできない仕事"に時間を戻せた、というのが本質的な成果です。

この事例から、他社に持ち帰れること

FAX注文だけの話ではありません。同じ考え方は、以下のような業務にも応用できます。

  • 請求書の受け取り:受け取った請求書の内容を、会計システムに転記する作業
  • 納品書の照合:発注データと、届いた納品書の突き合わせ
  • 申込書・アンケート:紙で受け取ったものを、リストに転記する作業

いずれも「紙 → 転記」の間にAIを1枚挟むと、「入力」が「確認」に変わる構造は同じです。関連する考え方は請求書づくりの「転記」を無くす — 経理まわりの自動化の始め方にもまとめました。

社内でここまでを組み立てる体制がまだ無い、という場合は、サービス紹介で伴走の中身(どこまでを一緒にやるか)をご確認ください。

中小企業に伝えたいこと

「うちの取引先はFAXだから、DXは無理」——そう言われる会社を、これまで何社も見てきました。ですが、取引先の商習慣は、こちらが変えるものではありません。変えるのは自社の"後ろ側"だけで十分です。

紙は届いてもいい。でも、そこから先の入力を人の時間ですべて埋める必要は、もうなくなってきています。この会社のように、「受けた後ろ側」だけをAIで軽くするやり方から、始めてみてはいかがでしょうか。

まず、ここから

「うちの注文書でも読めるのか」「どのくらいの手間で始められるのか」。そこが分からずに止まっている、というご相談をいただきます。実物の注文書を数枚お持ちいただければ、読めそうかどうかの見立てからご一緒できます。

動画で見る

よくあるご質問

Q. 注文書の自動読み取りには、どのAI OCRを使えばいいですか?

A. 製品名から決めないことをおすすめしています。先に「自社の注文書が読めるか」を実物で確かめるのが早道です。取引先1社ぶんの注文書を10枚ほど用意し、候補のサービスに同じ10枚を読ませて、品番・数量・納品希望日が正しく抜き出せるかを見比べてください。すでに社内で使っている複合機・Google Workspace・生成AIのサービスで足りることもあります。新しく増やすツールは少ないほど、現場に定着します。

Q. 手書きのFAX注文書も読めますか?

A. 印字と手書きが混じる注文書でも、AI OCRの精度は実用レベルに近づいています。ただし完全ではないので、AIが読み取った結果を人が最終確認する運用にするのが安全です。「入力」を「確認」に変えるイメージです。

Q. 従来のOCRとAI OCRは、何が違いますか?

A. 従来型のOCRは「この位置に品番がある」と決まった様式を前提にすることが多く、取引先ごとに書式が違うFAX注文書とは相性がよくありませんでした。AI OCRは項目名や文脈から「これが品番、これが数量」と判断できるため、様式がバラバラでも同じ仕組みで受けやすくなります。手書きの混在にも強くなってきています。

Q. FAX OCRの導入費用はどれくらいですか?

A. 取引先の数と、注文書の様式が何種類あるかで大きく変わるため、一律の金額はお伝えしていません。TSUNAGARU AI LABOの場合、どこから手を付けるかを決めるAIロードマップ設計が30万円〜、現場に定着するまでの業務インストール伴走が月30万円〜です(料金ページ(tsunagaru-ailabo.com/pricing)をご覧ください)。まず1社ぶんで試す範囲なら、既存のツールの設定変更だけで確かめられることもあります。

Q. 取引先にFAXをやめてもらうのは難しいのですが、どうすればいいですか?

A. 取引先のやり方は変えなくていい、というのが今回の考え方です。届く形は今まで通りFAXでも、社内に入った後の「入力」の部分だけをAIで軽くします。取引先には一切影響がありません。

Q. AIが読み間違えたときは、どうなりますか?

A. 読み取り結果をそのまま注文システムに確定させず、いったん下書きの状態で画面に出し、担当者が原本と照らして確定させる形にします。間違いはその場で直せますし、よく間違える項目が分かれば、抜き出し方を調整して減らしていけます。責任の所在が人の側に残るので、社内の合意も取りやすい形です。

Q. 導入のハードルが高そうです。

A. いきなり全取引先ではなく、まずは1社ぶんの注文書パターンで試すのが現実的です。うまくいった型を、他の取引先へ広げていきます。

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