TSUNAGARU AI LABO
事例約8分

道路工事の「保安図」を、地図から下書きするアプリで試した — 道路標識・標示業のAI導入、最初の3か月(愛知県/案件事例)

愛知県内の道路標識・標示業の会社と、AI導入の最初の3か月をどう進めたかの事例です。工事のたびに描き起こしている「保安図(保安設備図)」を、住所と地図から下書きするデモアプリを初回訪問の直後に試作し、実務の目で作り直しながら、社員研修とメール環境の統一へと進めています。企業名は伏せ、業種・地域・期間だけを載せます(一部匿名化)。

中屋 茂美の顔写真

中屋 茂美

TSUNAGARU AI LABO 主宰/株式会社TRAVEL CREATE 代表

事務所の机に広げた道路の図面と、オレンジ色のコーンの模型、瑠璃色の定規が並ぶ様子を真上から撮った写真

道路工事の現場には、「保安図(保安設備図)」という図面が欠かせません。どこから車線を絞り、どこに標識やコーンを置き、誘導員がどこに立つか。工事のたびに、場所に合わせて描き起こす図面です。

この記事は、愛知県内の道路標識・標示業の会社と進めている、AI導入の最初の3か月をまとめたものです。企業名は伏せています(一部匿名化)。まだ道の途中の事例ですが、「AI導入を何から始めるか」に迷っている経営者の参考になればと思い、書いています。

この案件の要点

項目 内容
業種/地域 道路標識・標示業/愛知県内
期間 2026年夏にご相談・初回訪問 → 秋から社員研修を開始(約3か月・進行中)
課題 工事ごとの保安図を毎回描き起こしている/ペーパーレス化と業務効率化を進めたいが、何から手をつけるか
試したもの 住所と地図から保安図の下書きを作るデモアプリ(初回訪問の直後に試作)
並行して進めていること 社員研修(国の助成金を活用)/メール環境の Google Workspace への統一/工事案件を管理する仕組みづくり
導入前 → 導入後の狙い 毎回ゼロから描く → 地図と寸法から下書きを出し、人は確認と仕上げに集中する
人が確認する範囲 図面の最終確認・申請に出す正式な図面は必ず社員が仕上げる(アプリは下書きまで)

※数値・内容は実際の支援に基づきます(一部匿名化)。

始まりは、経営者の集まりでのご縁でした

ご相談をいただいたのは2026年の夏です。経営者の集まりでご一緒した社長から、後日「ペーパーレス化と業務効率化に取り組み始めたところで、AI導入に向けて一度話を聞きたい」とご連絡をいただきました。

すでに他のシステム会社からも提案を受けている段階でした。だからこそ、私たちは**「何を入れるか」より先に、「どの仕事が一番重いか」を一緒に見る**ところから始めることにしました。

初回訪問で見せてもらった「2枚の図面」

初回訪問で、実際の工事で使った保安図を見せていただきました。

道路の形、車線の幅、工事する範囲、予告の標識を何メートル手前に置くか。1枚の図面に、現場の判断がぎっしり詰まっています。そして、これを工事のたびに場所に合わせて描き起こしているとのことでした。

「この下書きを、住所を入れるだけで出せたら楽になりますか?」とお聞きしたところで、試作することに決めました。

訪問直後に試作したデモアプリ

訪問を終えたその日のうちに、保安図の下書きを作るデモアプリを試作し、翌日にご案内しました。流れは4ステップです。

ステップ やること これまで
① 場所 住所を入れると、地図で場所を確認できる 地図を別に開いて確認
② 寸法 航空写真の上で2点をクリックすると、道路幅や工事範囲の距離が自動で入る 現地の情報から寸法を拾う
③ 標識 必要な標識と、予告の距離(50m/100m/200m)を選ぶ 毎回描き込む
④ 図面 図面・位置図・標識の一覧がA4横1枚にまとまり、印刷やPDFにできる 手で清書

規制のかけ方(片側交互通行/車線減少/歩道規制)を選ぶと図の描き方が変わり、図の中の標識はドラッグで位置を調整できます。作った図面は案件として保存し、あとから開き直せるようにしました。

ここで大事にしたのは、「完成品」ではなく「話のたたき台」として出すことです。言葉で「こういうものが作れます」と説明するより、動くものを見ていただくほうが、話がずっと具体的になります。

片側の車線をコーンで絞り、標識と誘導員を配置した道路工事の様子を、斜め上から見た立体的な図解で表現

実務の目で見直して、5か所を作り直した

試作したデモを、お預かりした実物の図面と並べて実務の目で見直すと、描き方が実務と違う点が5つ見つかりました。

  • 矢印の色の使い分け
  • 車線を絞る部分の形(45度の台形にする)
  • コーンの置き方(全周に並べる)
  • 標識の位置(路肩の線に沿わせる)
  • 誘導員の立ち位置(車を止める位置に置く)

数日のうちに、この5点をすべてアプリに反映しました。**図面には、現場で長く続いてきた「当たり前」が詰まっています。**それは、一度形にして実物と並べてみて、初めてはっきり見えてきます。最初から完璧な仕様書を作ろうとしていたら、この5点はもっと後になって見つかっていたはずです。

この「見せる→直す」の往復は、整備工場の撮影記録アプリや税理士法人の社内アプリでも同じでした。業種が違っても、進め方の芯は変わりません。

アプリより先に整えた「土台」

その後あらためて業務のヒアリングを行い、社長と相談して決めたのは、アプリを広げる前に、社員がAIを使える土台を作るという順番でした。

  1. 社員研修:国の人材開発支援助成金を活用し、社員の方向けの研修を始めています
  2. メール環境の統一:これまで使っていたメールソフトから Google Workspace(Gmail)へ移るための手順書を作り、お渡ししました。旧アドレスも使い続けられる形にしています(社内の仕組みを Google に揃える話は「Microsoft 365からGoogle Workspaceへの「引っ越し」」でも書きました)
  3. 工事案件を管理する仕組み:保安図だけでなく、工事案件や入札の情報を1か所で見られる仕組みづくりにも並行して取り組んでいます

地味に見えますが、メールやファイルの置き場所がバラバラのままAIを入れても、AIに読ませたい情報が散らばったままです。土台を揃えてから道具を乗せるほうが、結局は早いと考えています。

経営者として感じたこと

この3か月で一番大きかったのは、アプリの出来ではありません。初回訪問で、実物の図面を見せていただけたことです。

AI導入というと、「AIに何ができるか」を社長が調べて決めるもの、と思われがちです。でも本当に効く仕組みは、毎日の仕事の実物——図面、帳票、手書きのメモ——から始まります。社長が決めるのは、「どの仕事から始めるか」と「その仕事の実物を見せること」だけで十分だと、あらためて感じています。

まとめ

  • 道路標識・標示業の「保安図」を、住所と地図から下書きするデモアプリを初回訪問の直後に試作した
  • 実物の図面と並べて見直し、5か所を作り直した。現場の「当たり前」は、形にして初めて見えてくる
  • アプリを広げる前に、社員研修とメール環境の統一で土台を揃えている(進行中)

同じように「何から始めればいいか分からない」という段階から伴走するAI内製化伴走プログラムの進め方は、名古屋・愛知の業務自動化サポート完全ガイドにもまとめています。自社の"一番重い仕事"から一緒に見てみたい方は、無料相談からお気軽にご相談ください。

よくあるご質問

Q. 保安図をアプリで作れば、そのまま役所や警察に出せるのですか?

A. いいえ。今回のアプリは、地図と寸法から「下書き」を素早く作るためのものです。実際の道路使用の申請では、所轄の警察署や道路管理者の基準に合った正式な図面が必要で、最終的な確認と仕上げは必ず社員の方が行います。アプリの役目は、毎回ゼロから描く手間を減らし、確認に時間を回せるようにすることです。

Q. 初回訪問の直後にデモが出てくるのは、なぜですか?

A. 訪問時に、実際の保安図を見せていただけたからです。現物があると「何を描く仕事なのか」が具体的に分かるので、AIを使って画面の試作をすぐ作れます。完成品ではなく「話のたたき台」として出すのがポイントで、たたき台があると「ここは実務と違う」という点が具体的に見えてきます。

Q. AI導入なのに、なぜメールの引っ越しまで手伝っているのですか?

A. AIを社内で使う土台として、社員全員が同じ仕組み(Google Workspace)の上で仕事をする状態を先に作る必要があったからです。メールやカレンダー、ファイルの置き場所がバラバラのままだと、AIに読ませたい情報も散らばったままになります。地味ですが、ここを先に揃えると、研修で学んだことがすぐ実務に乗ります。

あわせて読みたい

この記事の内容を、御社で試すなら。

「うちの場合はどうなる?」を、無料相談でお聞かせください。

無料相談オンライン対応
相談を申し込む