
2026年9月29日、愛知県旅行業協会 名古屋地区のAIセミナーで、講師として2コマを担当しました。会場は、私たちが名古屋・栄で運営している TSUNAGARU SPACE。第1部はビギナー向け、第3部は実践編という構成で、申込は第1部が18社、第3部が22社でした(9月25日時点の集計)。
今回は、そこで話した中身を整理します。旅行業の方に向けた内容ですが、「情報が人ごとに散らばっている会社」なら同じ構造なので、ほかの業種の社長にも読んでいただけるように書きます。
当日の構成
| 時間 | 内容 | 使った道具 |
|---|---|---|
| 第1部(90分) | ビギナー向け「Google Workspaceを活用した旅行業向けAI活用術」 | Drive・フォーム・スプレッドシート・カレンダー・Gmail・Gemini |
| 第3部(90分) | 実践「"やってくれるAI"へ」 | Claude Code・Google Workspace Studio・Gemini Notebook(旧 NotebookLM) |
第2部は協会の地区会で、私は議事録を担当しました。AIの話ではないので、ここでは触れません。
第1部:DXが1階、AIが2階
第1部で一番伝えたかったのは、AIは2階に住んでいるということです。
旅行会社の仕事は、お客様の情報・手配先とのやり取り・日程表・見積が、担当者のメール・個人のPC・紙のファイルに散らばりがちです。この状態でAIに「この団体の日程表を作って」と頼んでも、AIは読める場所に資料が無いので動けません。
| 階 | 何をするか | 道具 |
|---|---|---|
| 1階(DX) | 情報を1か所に集める。誰が見ても同じ場所にある状態にする | Drive・フォーム・スプレッドシート・カレンダー |
| 2階(AI) | 集まった情報をAIが読み、下書き・要約・表にする | Gemini(Gmail・Docs・Sheetsの中で動く) |
1階ができていない会社がAIを入れると、「AIに聞いても、うちのことは知らない」という感想で終わりがちです。逆に、1階さえできていれば、2階はあとから乗せられる。順番の話です。
旅行会社の「1階」の具体例
当日は、旅行会社の実務に合わせて、1階の作り方を4つ話しました。
- お客様の情報はフォームで受け取り、スプレッドシートに自動で並べる。申込書を目で見て転記する作業をなくす
- パスポートなどの大事な情報は、台帳と同じ場所に置かない。鍵のかかる別の場所に保管し、台帳にはリンクと「消す日」だけを書く
- カレンダーの予約ページで、相談の日程調整を自動にする。往復メールの回数を減らす
- Gmailの返信画面でDriveの資料を参照する。「あの資料どこだっけ」をメールを書きながら解決する
2番目の「大事な情報は台帳と分ける」は、便利さの話ではなく、お客様の情報を預かる会社としての線引きの話です。AIを入れる前に、ここは決めておいた方がいい。これは何度でも言います。
2階の例:調べ物を、AIに「置いておく」
第1部の後半では、Geminiの Deep Research を実演しました。題材は「11月に12名で1泊2日、名古屋発着の北海道旅行」。これを出典付きで調べさせ、できたレポートをもとに日程表の1枚絵(インフォグラフィック)まで作らせる流れです。旅行会社の方には、日々の仕事そのものの題材だと思います。
ここで見せたかったのは、答えの正確さよりも使い方です。調べ物をAIに投げて、待っている間に別の仕事をして、戻ってきたら出典を確認する。AIに「任せきり」でも「つきっきり」でもなく、置いておくという付き合い方です。
実際、事前に試したレポートには、出典の付いていない章や、無関係なページが出典に混ざった箇所がありました。当日はそれをそのまま見せて、「だから出典の確認は必ず人がやる」という話につなげました。AIが間違える実例は、隠すより見せた方が、使い方が伝わります。

第3部:「教えてくれるAI」から「やってくれるAI」へ
第3部は実践編です。チャットで答えてくれるAIと、ファイルや表を実際に動かしてくれるAIは別物だ、という話から入りました。冒頭では「AIエージェントとは何か」を、辞書と新人スタッフの違いにたとえています。辞書は聞けば答えますが、仕事はしません。新人スタッフは、頼めば動いて、結果を持ってきます。
紹介した例と、その場で動かした実演は、次のとおりです。
| 内容 | 形 | 旅行会社での使いどころ |
|---|---|---|
| 見本の問い合わせ(社員旅行・日帰りバスの相談)を読ませ、返信の下書きを作らせる | その場で実演(送信はしない) | 団体の見積依頼・日程変更の一次返信 |
| 見本のFAX(手配先からの回答)をAIに読ませて要約させる | その場で実演 | 手配先からのFAX回答の見落とし防止。仕組みとしてはWorkspace Studioで要約してGoogle Chatに流す形を紹介 |
| 海外の個人旅行(4泊5日・3名)の日程表づくり | 事例として紹介 | 個人旅行の提案書・確定日程表 |
| 自社の婚活バスツアー事業の基幹システム | 事例として紹介 | 団体・企画旅行の運営全体 |
問い合わせ返信の考え方は、以前「問い合わせメールの一次返信を、AIに下書きさせる」で書いたものと同じです。AIは下書きまで、送るのは人。この線は実演でも変えていません。
自社の基幹システムは、手配→ツアー作成→募集ページ→予約受付→入金消込(入金と請求の突き合わせ)→人数管理→当日→集客の8工程に分けて紹介しました。旅行会社の方には一番イメージしやすい流れだと思ったからです。
後半30分は Gemini Notebook(旧 NotebookLM)です。当日の地区会の議題に関係する観光情報の公式ページを数本読み込ませ、「この資料だけを根拠に答える箱」を作って質問する、という使い方を体験していただきました。箱の考え方は「Gemini の"案件ごとの箱"が組織向けに正式提供」で詳しく書いています。
正直に話したこと
セミナーでは、うまくいっている仕組みだけでなく、うちでも止まっている仕組みがあることも話しました。通知の仕組みが止まった週があったこと、自動投稿を止めた週があったこと。AIの仕組みは一度作れば終わりではなく、止まったら気づいて直す人が要ります。
また、「何分が何分になった」という時間短縮の数字は、測っていないものは出しませんでした。測っていない数字を言うのは簡単ですが、それをやると、聞いた方が自社で同じ数字を期待してしまいます。
旅行会社でなくても
今回は旅行業の方向けでしたが、終わってから考えていたのは、製造業の図面と見積、士業の顧問先資料、建設業の現場写真も同じだ、ということでした。どれも「人ごとに散らばっている」という点で同じで、1階を作ってから2階を乗せる順番も同じです。
自社でどこから手を付けるか迷う場合は、「名古屋・愛知の中小企業のための"業務自動化"完全ガイド」に全体の地図を置いています。
講座のご案内
セミナーで体験していただいた内容は、LABOの講座でも同じ形で開いています。Google Workspace × Gemini の体験と、Claude の導入を当日に完了する講座の2本立てです。日程と内容は講座・研修のページをご覧ください。
「うちの業界向けに話してほしい」という協会・団体の方からのご相談も受けています。無料相談フォームからお知らせください。
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よくあるご質問
Q. 旅行会社でなくても、同じ考え方は使えますか?
A. 使えます。「情報を1か所に集める1階」と「AIが読んで動く2階」の2階建ては、業種を問いません。旅行会社はお客様の情報・手配先の情報・日程表が人ごとに散らばりやすい業種なので題材にしましたが、製造業の図面や見積、士業の顧問先資料でも構造は同じです。
Q. 個人向けの無料Googleアカウントでも、セミナーで話した内容はできますか?
A. 一部はできますが、Gmailの返信画面でDriveの資料を参照するような「Geminiが仕事の中に同乗する」機能は、日本では有料のWorkspaceプランが前提になるものが多いです。セミナーでも「どこまでが無料で、どこからが有料か」は表にして区別してお伝えしました。まずは無料の範囲で「Driveに集める」を始め、効き目を感じてから有料プランを検討する順番で十分です。
Q. セミナーで使った資料は公開されていますか?
A. 参加者向けのページと配布資料は、当日の参加者に案内したURLで共有しており、検索には載せていません。同じ内容を体験できる講座をLABOで開いていますので、この記事の末尾の「講座のご案内」をご覧ください。


