
「このコピー機のリース、いつまででしたっけ」「保守契約、今年も自動で更新されてますね」——月末の請求書を見て初めて気づく。中小企業の経理や総務で、よく起きていることです。
コピー機のリース、システムの利用契約、設備の保守、事務所の賃貸借、外注先との業務委託。数えてみると、社員20名ほどの会社でも、契約は思っている以上にあります。そして、その更新期限と解約予告の期限は、担当者の記憶と、キャビネットの中のファイルにしかない。これが実態ではないでしょうか。
私がお伝えしたいのは、「契約管理システムを入れましょう」ではありません。契約書を AI に読ませて1枚の台帳にして、予告期限をカレンダーに流す。 これだけで、「気づいたら自動更新されていた」はかなり減らせます。
「覚えている」から「見れば分かる」へ
| 担当者の記憶で回す(Before) | 台帳とカレンダーで回す(After) | |
|---|---|---|
| 契約の一覧 | キャビネットのファイル。全件を言える人がいない | 1枚のスプレッドシートに全件 |
| 更新期限 | 請求書が来て気づく | 予告期限の2か月前にカレンダーで通知 |
| 解約したいとき | 予告期限を過ぎていて、もう1年続く | 予告期限の前に、続けるか見直すかを決められる |
| 担当者が不在のとき | 誰も分からない | 誰が見ても同じ表 |
| 見直しの機会 | ない(更新されるまま) | 期限の通知が「見直しの会議」の合図になる |
ポイントは、右側の列に「新しいソフト」が出てこないことです。使うのは、すでに会社にあるスプレッドシートとカレンダー、それに業務用の AIだけです。
台帳に載せる項目は、7つで十分
最初から立派な台帳を作ろうとすると止まります。項目は、次の7つに絞ってください。
| 項目 | 例 | なぜ要るか |
|---|---|---|
| 相手先 | ○○リース株式会社 | 誰との契約か |
| 契約の種類 | 複合機リース/保守/システム利用 | 見直しの分類に使う |
| 契約開始日 | 2024年4月1日 | 期間の起点 |
| 契約満了日 | 2029年3月31日 | いつまでか |
| 自動更新の有無 | あり(1年ごと) | 放っておくとどうなるか |
| 解約予告の期限 | 満了の3か月前まで(書面) | 一番大事。 この日を過ぎると次の期間が確定する |
| 社内の担当 | 総務・○○ | 通知を誰に飛ばすか |
契約書の原本には、ほかにも金額や条文がたくさん書かれています。でも、台帳の目的は「期限を忘れないこと」なので、まずはこの7つで足ります。金額は、見直しの会議のときに原本を開けば分かります。
AI にやらせるのは「読んで、表に起こす」ところ
ここで AI の出番です。契約書を、人が1冊ずつ開いて7項目を転記するのは、件数が増えるほど重い仕事になります。この読んで、表に起こす部分を AI に任せます。
やり方は、難しくありません。契約書のPDF(紙ならスキャンしたもの)を AI に渡して、こう頼みます。
この契約書から、「相手先・契約の種類・契約開始日・契約満了日・自動更新の有無(ある場合はその期間)・解約予告の期限・根拠になった条文の番号」を表にしてください。契約書に書かれていない項目は「記載なし」と書いてください。
大事なのは最後の一文です。書かれていないことを AI に埋めさせない。 「記載なし」と出てきた項目は、人が原本を見て判断します。7項目のうち「社内の担当」は契約書には書かれていないので、人が書き足します。代わりに「根拠になった条文の番号」を確認用の列として出させておくと、あとで人が確認するときに、どこを見ればよいかがすぐ分かります。
紙やPDFの内容を AI に読み取らせて手入力をなくす考え方は、「紙やPDFの内容を、AIに読み取らせて「手入力」をなくす」で詳しく書いています。

人がやるのは「見比べて、印を付ける」ところ
AI が起こした表は、下ごしらえです。そのまま信じてはいけません。最初の一巡だけは、台帳の1行ずつを、原本と見比べる工程を必ず入れてください。
見るところは、3つに絞れます。
- 契約満了日(ここがずれると、あとの通知日が全部ずれる)
- 自動更新の有無と、その期間(「1年ごと」なのか「同一条件で同じ期間」なのか)
- 解約予告の期限と、方法(「満了の3か月前まで」「書面で」など)
この3つが合っていれば、台帳としての役目は果たせます。見比べて合っていたら、台帳に「確認済み」の印と確認した人の名前を入れます。この印がある行だけが、信用してよい行です。
ここで出てくる「確認した人の名前を残す」考え方は、取引先ごとの締め日・支払サイトを1枚にまとめる話と同じです。「取引先ごとの「締め日と支払サイト」を、AIに覚えさせる」と合わせて、経理・総務の"人依存"を1枚ずつ減らしていくイメージです。
予告期限を、カレンダーに流す
台帳ができたら、仕上げです。解約予告の期限の、2か月前に、担当者のカレンダーへ予定を入れます。
なぜ「予告期限」の「2か月前」なのか。満了日の前に通知しても、もう予告期限を過ぎていて間に合わないことがあるからです。そして、通知が来てから「続けるか、見直すか、相見積を取るか」を決めて、書面を出すまでに1〜2か月は要ります。
| タイミング | 誰が | 何をするか |
|---|---|---|
| 予告期限の2か月前 | 担当者 | カレンダーの通知で気づく。社長に「この契約、続けますか」と聞く |
| 予告期限の1か月前 | 社長・担当者 | 続ける/見直す/やめるを決める。見直すなら相見積 |
| 予告期限まで | 担当者 | やめる・変える場合は、契約書の定める方法(書面など)で予告を出す |
| 満了日 | 担当者 | 台帳を更新する(新しい満了日・新しい予告期限) |
カレンダーへの登録は、件数が少なければ人が入れて構いません。件数が多い場合は、スプレッドシートの日付からカレンダーへ予定を作る仕組み(Google Workspace の自動化機能や、簡単なスクリプト)を作ることもできます。最初から自動にしなくても、台帳があって、通知が来る状態になれば、目的は達しています。
最初の一歩(3つ)
- 契約書を1か所に集める:紙はスキャンして、共有ドライブの「契約書」フォルダに。相手先ごとにファイル名を揃えます。フォルダの整え方は「AIに社内の資料を読ませる前に、共有ドライブを「探せる形」に整える3つのルール」が参考になります
- AI に7項目の表を起こさせる:まずは5件だけ試して、読み取りの精度を人が見ます。使えると分かってから、全件に広げます
- 「確認済み」の印を付けてから、カレンダーに流す:印のない行は、まだ信用しない。この順番だけは守ってください
契約の台帳は、作った瞬間より、半年後に「あの契約、見直せた」と言えたときに価値が出ます。担当者の記憶に頼っていた仕事を、見れば分かる形に変える。経理・総務の自動化は、こういう小さな1枚から始めるのが、いちばん続きます。
まとめ
- 契約の更新期限が「担当者の記憶」にしかないと、自動更新に気づくのは請求書が来たとき
- 契約書PDFを AI に読ませて7項目の台帳にし、解約予告の期限の2か月前にカレンダーで通知する
- AI は「読んで表に起こす」まで。原本と見比べて印を付けるのは人。印のある行だけを信用する
経理・総務まわりの手作業を1つずつ仕組みに変える進め方は、名古屋・愛知の中小企業のための「業務自動化」完全ガイドにまとめています。台帳づくりから通知の自動化まで、自社の社員さんでできるように伴走してほしい場合は、当社のサービスのページをご覧いただくか、無料相談からお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 契約書をAIに読ませて大丈夫ですか?
A. 会社として利用を認めた、業務用のAI(会社契約の Google Workspace の Gemini や、法人プランの Claude・ChatGPT など)を使ってください。無料の個人アカウントに契約書を貼り付けるのは避けます。また、台帳に必要なのは「相手先・期間・更新条件・予告期限」であって、金額や条文の全文は必ずしも要りません。渡す範囲を決めてから始めるのが基本です。
Q. AIが読み取った日付が間違っていたら、どうなりますか?
A. 起こり得ます。だからこそ、最初の一巡は「AIが書いた台帳と、契約書の原本を人が見比べる」工程を必ず入れてください。特に自動更新の有無と解約予告の期限(「満了の3か月前まで」など)は、人が確認した印を台帳に付けるところまでが仕組みです。
Q. 契約が10件くらいしかありません。それでも作る意味はありますか?
A. あります。件数が少ない会社ほど「担当者が覚えているから大丈夫」になりやすく、その人が不在になったときに確認が漏れやすくなります。10件なら短い時間で台帳ができるので、むしろ始めやすいと考えてください。


