
「求人を出しているのに、応募が1件も来ない」。愛知の中小企業の社長と話していると、ここ数年、本当によく聞く悩みです。
給与や休日の条件で大手と張り合うのは、正直に言って簡単ではありません。でも、求人票を見せてもらうと、条件以前のところで損をしていることが少なくありません。
「製造スタッフ。未経験歓迎。アットホームな職場です。」
これでは、応募する側はその会社でどんな1日を過ごすのかが想像できません。仕事の中身が想像しにくいことは、応募をためらう理由の1つになります。
求人票の書き直しは、AIに「下書き」を任せやすい仕事です。ただし材料は現場にしかなく、最後に責任を持つのは会社です。今回はその分け方と手順をまとめます。
求人票づくりを分解すると、AIの出番が見えてくる
| 工程 | 誰がやるか | ポイント |
|---|---|---|
| 材料を集める(1日の流れ・やりがい・大変なこと) | 人(現場の社員) | 社長の想像ではなく、実際に働く人の言葉で |
| 話を整理して、読みやすい文章にする | AI | 長い話を、見出しと箇条書きに整える |
| 応募する人の目線で読み直す | AI | 「わかりにくい所」「不安になる所」を指摘させる |
| 労働条件・法令上の表記を確認する | 人 | 原本・就業規則と照合。迷ったら専門家へ |
| 公開する・反応を見て直す | 人 | 応募数・問い合わせ内容で書き方を見直す |
AIが得意なのは真ん中の2つ、整理と読み直しです。材料集めと最終確認は人の仕事として残します。
手順1:現場の社員に「3つの質問」で話してもらう
求人票の材料は、社長の頭の中ではなく現場にあります。募集する職種で実際に働いている社員に、次の3つを話してもらいます。
- 1日の流れ:朝出社してから帰るまで、何をしているか
- この仕事で一番うれしい瞬間:どんなときに「やってよかった」と思うか
- 入社前に知っておいてほしい大変なこと:きつい時期、覚えるのに時間がかかること
スマホの音声メモで、1人あたり各質問5分ほど(1人15分程度)が目安です。録音を文字に起こすのも、いまはAIに任せられます(やり方はベテラン社員が辞める前に——属人化業務をAIに「聞き書き」で残す3ステップと同じ要領です)。
3つ目の「大変なこと」を入れるのがポイントです。良いことしか書いていない求人票は、かえって信用されません。大変なことも先に伝えておくと、入社後の「聞いていた話と違う」というずれを減らす助けにもなります。
手順2:AIに「下書き」を作らせる
文字に起こした話と、いまの求人票をAIに渡して、こう頼みます。
以下は、当社の製造スタッフとして働く社員3名の話と、現在の求人票です。 これをもとに、求人票の「仕事内容」欄の下書きを作ってください。 条件: ・応募する人が「入社後の1日」を想像できるように、時間の流れで書く ・大変なことも正直に書く ・年齢・性別を限定する表現は使わない ・給与・休日などの条件は書き換えず、元の求人票のまま残す ・社員の話にない事実を付け足さない
最後の2行が大事です。AIは文章を整えるのが上手なぶん、それらしい「福利厚生」や「やりがい」を勝手に足してしまうことがあります。書いていないことを足さない、と最初に縛っておきます。

手順3:AIに「応募する側」として読み直させる
下書きができたら、今度は立場を変えて読ませます。
あなたは、この会社に応募しようか迷っている求職者です。 この求人票を読んで、「わからない所」「不安になる所」「もっと知りたい所」を5つ挙げてください。
「残業はどれくらいあるのか」「未経験でどのくらいで一人前になるのか」——自分たちでは当たり前すぎて書き忘れていたことが、意外なほど出てきます。残業の有無のように法令上、募集時に明示が必要な労働条件は、確認したうえで必ず書きます。それ以外の、人によって答えが変わる内容は、面接で説明できるよう準備しておきます。
手順4:条件と表記は、人が原本と照らし合わせる
ここから先はAIに任せず、人がやります。
① 労働条件は原本どおりか 給与・勤務時間・休日・試用期間などが、就業規則や雇用条件と食い違っていないか。AIが要約の過程で数字や言い回しを変えていないかを確かめます。
② 2024年4月から明示が必要になった項目が入っているか 2024年4月の職業安定法施行規則の改正で、求人の募集時に明示しなければならない労働条件に、**「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準(更新上限の有無と内容)」**が加わりました(厚生労働省のリーフレット)。古い求人票をもとに書き直すと、ここが抜けたままになりがちです。
③ 年齢・性別を限定する表現がないか 募集・採用での年齢制限は、法律で原則禁止されています(厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」)。「若手」「20代が活躍」のような表現も、使い方によっては年齢を限定していると受け取られます。
判断に迷うところは、社労士やハローワークに確認してください。AIに「これは法律上問題ないか」と聞いて済ませるのはやめましょう。AIの答えを確かめる考え方は、AIの答えを「それっぽい」で受け取らない — 5分で終わる、社員が使える裏取りの型にまとめています。
書き直す前と後で、何が変わるか
| 書き直し前 | 書き直し後 | |
|---|---|---|
| 仕事内容 | 「製造スタッフ。機械操作など」 | 朝礼→担当ラインの段取り→検品→翌日の準備、の1日の流れ |
| やりがい | 「アットホームな職場」 | 社員本人の言葉で「うれしかった瞬間」 |
| 大変なこと | 書いていない | 繁忙期の時期、覚えるのに時間がかかる作業を正直に |
| 応募者の不安 | 面接まで解消されない | よくある疑問への答えを先に書いておく |
| 作る手間 | 社長が夜に一人で考える | 現場への短い聞き取り+AIの下書き+人の確認 |
ここに数字は書けません。応募が増えるかどうかは、職種・地域・時期で大きく変わるからです。ただ、求職者は複数の求人を見比べて応募先を選びます。具体的な仕事の中身が書かれていることは、その比較の土俵に乗るための材料になります。
採用は、AIで「作業」を減らして、人で「判断」する仕事
求人票を書くのは作業ですが、誰を採るかを決めるのは経営判断です。AIに任せていいのは前者だけ。この線引きは、どの業務でも同じです(考え方は社長が「AIに任せる仕事」を見分ける、3つのモノサシで整理しています)。
求人票に限らず、社内の文書づくりをAIで軽くする方法は、LABOのAI活用講座で実際に手を動かしながら身につけられます。自社の採用や業務に合わせて相談したい方は、無料相談からお気軽にどうぞ。
いまの求人票を、現場の社員に読んでもらってください。「これ、うちの仕事と違う」と言われたら、そこが書き直しの出発点です。
よくあるご質問
Q. AIが書いた求人票を、そのまま求人サイトやハローワークに出しても大丈夫ですか?
A. おすすめしません。AIは渡した情報をもとに読みやすい文章にするのは得意ですが、労働条件の細かな表記や、法令上明示が必要な項目がそろっているかまでは保証できません。給与・勤務時間・休日などの条件は必ず人が原本と照らし合わせ、不安な点は社労士やハローワークに確認してから出してください。
Q. 「若い人が欲しい」と書いてはいけないのですか?
A. 募集・採用での年齢制限は、法律で原則として禁止されています(例外として認められる場合があります)。性別を限定する表現も同様に注意が必要です。AIに書き直させるときは「年齢・性別を限定する表現は使わない」と最初に伝え、仕上がった文章も人の目でもう一度確認してください。
Q. 現場の社員にインタビューする時間がとれません。
A. 長いインタビューは要りません。「1日の流れ」「この仕事で一番うれしい瞬間」「入社前に知っておいてほしい大変なこと」の3つを、スマホの音声メモで5分ずつ話してもらうだけでも、求人票の材料としては十分です。


