TSUNAGARU AI LABO
ノウハウ7

経営数字の「1画面ダッシュボード」を AI と一緒に Sheets で作る

売上・粗利・入金・案件数——経営に必要な数字を1画面で見たい。専用ソフトを買う前に、Googleスプレッドシートと AI で作る手順を整理しました。難しい設定は要りません。

田畑 卓也の顔写真

田畑 卓也

AI開発リーダー/講師

経営数字を1画面にまとめたスプレッドシートのダッシュボードイメージ

「売上、粗利、入金予定、案件数——経営に必要な数字を1画面で見たい。でも専用のダッシュボードソフトは高いし、社内で使いこなせる自信もない」

そう感じている経営者に、まず試していただきたいのが Googleスプレッドシート + AI の組み合わせです。専用ソフトを買う前の「入口」として、これで十分な情報量が出せます。

何を1画面に載せるか(例)

いきなり全部を載せようとせず、経営者が毎朝2〜3分で見るものに絞ります。目安は5〜7項目。

見る項目 どこから来る数字か 更新頻度の目安
今月の売上(着地見込み) 会計ソフト or 受注管理 毎朝
今月の粗利(着地見込み) 会計ソフト or 手入力 週1
未入金の残額 会計ソフト or 請求管理 毎朝
進行中の案件数 受注管理 or スプレッドシート 毎朝
商談中の案件数 営業日報 or スプレッドシート 毎朝
今月の広告・販促費 会計ソフト or 手入力 週1
主要KPI 1〜2個(業種で変える) 現場担当のシート 毎朝

「業種で変える」の主要KPIは、たとえば製造業なら"納期遅延件数"、飲食なら"客単価と客数"、旅行なら"予約成約率"のように、その会社が現場で使っている数字を1〜2個入れます。

作り方の考え方(Before → After)

フェーズ 従来のやり方 ダッシュボード化した後
数字を集める 経理・営業に「今月どう?」と聞き回る シートを開くと1画面で見える
判断する 集まった数字を頭で組み立て直す すでに並んでいるので、比較・判断だけに集中
会議で使う 個別の Excel を貼り付けて説明 ダッシュボードのスクショ1枚で始まる

「集める」を先に自動化し、「判断」に頭を空ける——これがダッシュボードの本当の効き目です。

AI にやらせるところ/人がやるところ

AI の使いどころは、シートの"組み立て"を手伝わせる部分です。ゼロから関数を書かなくても、Gemini や ChatGPT に日本語で頼めば、必要な数式・グラフの雛形を返してくれます。

AI に任せる工程

  • 数式の下書き(SUMIFS / QUERY / IMPORTRANGE の書き方)
  • グラフの種類選び(月次推移は折れ線、構成比は円)
  • 前月比・前年比の計算列を追加する
  • "今月の着地見込み"を過去実績から計算する式を作る

人が決めるところ

  • どの数字を載せるか(=経営者が毎朝見たいもの)
  • 数字の定義(=売上は税抜か税込か・案件は受注時点か請求時点か)
  • 更新する頻度(=毎朝/週1/月1)
  • 誰が見て・誰が更新するか

数字の定義だけは AI に決めさせてはいけません。ここは経営者が決めて、社内で言葉を揃える必要があります。

3ステップの作り方

ステップ1:最小の1画面を作る(1〜2時間)

新しいスプレッドシートに、上の表の項目名を縦に並べ、右側に数字を入れるセルを用意します。まずは手入力で埋めて、1画面で全部が見える感覚を確認します。ここで「この項目は要らない」「これも足したい」が見えてきます。

ステップ2:数字の入り口を1本ずつ繋ぐ

一度に全部を自動化しようとせず、まず1つの数字を毎朝ここに出す仕組みを1本作ります。たとえば「未入金の残額」を、請求管理シートから毎朝コピーで反映するようにする——それが動いてから、次の数字に取りかかります。この順番のほうが失敗しにくいです。

「どの数式を書けばいいか分からない」場面では、Gemini や ChatGPT に、頼むときの条件をなるべく具体的に渡します。目安は「①どのシート(タブ)の、どの列を、②どの列に日付が入っていて、③どの期間を対象に、④どこに出したいか」の4点です。たとえば「タブ『請求管理』の H 列(金額)を、G 列の日付が今月に該当する行だけ合計して、タブ『ダッシュボード』の C5 に出す関数を書いてください」のように頼むと、そのまま貼り付けやすい形の関数が返ってきます。返ってきた式は、まず過去の月で元データと突き合わせて数字が合うかを確認してから、本番のシートに入れると安全です。動かなかった時は、エラーメッセージをそのまま貼って「これはどういう意味?」と聞き直すのが早いです。

ステップ3:毎朝の"見る習慣"に落とす

作った直後は珍しくて見ますが、1週間もすると開かなくなるのがよくある落とし穴です。毎朝の朝礼の冒頭2分、あるいは始業直後のコーヒーの時間に、ダッシュボードを開くルーティンを決めます。数字が動くタイミング(月初・締め日・入金日)に、社内の誰かに「気づき」を書いてもらう欄を1つ用意すると、続きやすくなります。

つまずきやすいポイント

  • 数字の定義が揃っていない:営業と経理で「売上」の意味が違うと、ダッシュボードの数字は信用されなくなります。定義を1枚のメモにして、シート内にリンクしておく
  • 項目が多すぎて開かない:7項目を超えたあたりから、経営者の目が滑りやすくなります。目安として「まず5項目」で1ヶ月運用する
  • 1人で作ってしまう:現場で数字を扱っている担当者と一緒に作らないと、更新が続きません。作った後の"回す人"を最初に決める

次の一歩

Sheets のダッシュボードで手狭さを感じ始めたら(=データ量が増えて開くのが重い/複数事業を横串で見たい/社外にも安全に共有したい など)、BI ツール(Looker Studio など)や、事業別の月次を1画面に統合する専用画面の設計を検討する段階です。判断は処理負荷・見せたい内容・共有権限の要件で変わるので、"必ずこの規模で乗り換え"と決まっているわけではありません。関連する事例は卸・販売の受注・在庫を1画面に統合した話にまとめました。

「うちの数字だと、どこから載せればいいか分からない」——そんな時は、名古屋・愛知の中小企業のための「業務自動化」完全ガイドで挙げた3条件に照らして、最初に載せる項目を一緒に決めます。生成AI導入支援サービスからご相談ください。


経営者が毎朝ダッシュボードを2分見て判断に集中している様子

ダッシュボードは"作ること"がゴールではなく、"毎朝見ること"がゴールです。5項目 × 2分 × 毎朝——この小さな習慣が、月末の"数字探し"を無くしていきます。

よくあるご質問

Q. KPI・BIとは何ですか?

A. KPI は「経営判断のよりどころにする数字」(Key Performance Indicator)、BI は「集めた数字を可視化・分析するための道具全般」(Business Intelligence)を指します。この記事では、経営者が毎朝見たい数字を Google スプレッドシート上で"1画面のダッシュボード"に並べる作り方を扱います。

Q. BIツール(Looker Studio など)とどう違いますか?

A. BIツールは大量データの可視化と共有に強く、Sheets のダッシュボードは"経営者が毎朝1画面で見る"軽い用途に向きます。まずは Sheets で作って、社内で見る習慣がついてから BI に移行する順番が現実的です。

Q. 数字はどうやって集めるのが良いですか?

A. 会計ソフト・受注管理・スプレッドシートの3つに数字が散っているのが中小企業の多くのパターンです。全部を一気に繋げず、まずは「1つの数字を毎朝ここに出す」を1本作り、それが動いてから2本目を足す進め方が失敗しにくいです。

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