
「AIを入れたいけれど、うちには詳しい人がいなくて」。中小企業の経営者の方から、いちばんよく聞くのがこの言葉です。
正直に言います。「詳しい人」を待っていると、いつまでも始まりません。うちの会社(TC社)も、AIの伴走支援先も、みんな同じスタート地点でした。
大事なのは「詳しい人を採る」ではなく、「いまいる社員から、推進担当を1人決める」ことです。今日は、その1人を選ぶときに社長が使える3つの視点をお話しします。
この記事の要点
- 中小企業に必要なのは「AI専任担当」ではなく「AI推進担当」— 兼務で構わない
- 選ぶときの視点は3つ:①自分の業務で試せるか ②言葉にできるか ③困った時に外に聞けるか
- 社長自身が兼ねる場合も、半年〜1年で必ず引き継ぐ設計にする
そもそも「AI推進担当」は何をする人か
ここを誤解している経営者が意外と多いです。AI推進担当は、プログラミングができる人でも、ITに詳しい人でもありません。次の3つが仕事です。
| やること | 具体的に何をするか |
|---|---|
| 試す | 新しいAIツールが出たら、まず自分の業務で1回使ってみる |
| 翻訳する | 使ってみた感想を「他の部署の人にも分かる言葉」で社内に共有する |
| 相談する | 分からない時に、社外の専門家(LABOのような伴走者)に聞ける |
以上です。プログラムを書く必要はありません。全社員の教育係になる必要もありません。「自分でまず触って、社内で1人目の理解者になる」だけで、会社は動き出します。
推進担当を選ぶ、3つの視点
社長がこの1人を選ぶとき、次の3つで判断してください。年齢・役職・部署は関係ありません。
視点①:自分の業務で「試そう」と思える人か
これがいちばん大事です。新しいツールが出たときに、「面倒くさい」ではなく「ちょっと試してみるか」と手が動く人。過去に社内で、こんな行動をしたことがある人が候補です。
- 新しい業務ソフトが入った時、マニュアルを待たずに触ってみた
- 会社のExcelファイルを、頼まれてもいないのに関数で整理していた
- 「これ、何かで自動化できませんかね?」と口にしたことがある
こういう人はもう予備軍です。AIリテラシーの高さより、"面倒くさがらない性格"のほうが100倍効きます。
視点②:使ってみた感想を「言葉にできる」人か
技術に詳しい人ほど、口下手なことがあります。ですが推進担当は、社内に説明する場面が必ず出てきます。
必要なのは、次のような翻訳ができる人です。
- 「これ、便利」→ ではなく → 「◯◯の業務でこう使うと、月に3時間くらい浮く気がします」
- 「AIは万能じゃない」→ ではなく → 「見積書の下書きはいけますが、最終確認は人がやったほうがいいです」
専門用語を使わずに、社内の言葉で語れる人。ここが2つ目のフィルターです。
視点③:困った時に「外に聞ける」人か
これは意外と見落とされます。AI推進担当は、自分で全部解決する必要はありません。むしろ、「これは自分では判断できない」と正直に手を挙げられる人のほうが、長く続きます。
社内で全部背負い込む人は、3か月で疲れて止まります。「LABOさんに聞いてみます」「詳しい人のブログを探します」と外を頼れる人が、結果として社内の学びを速くします。

「社長自身が兼ねる」場合の、必ず入れたい期限
「うちは私しかいません」——このお話も、実はよくあります。私自身、TC社の中でAI推進を最初は自分で握っていました。
社長が推進担当を兼ねるのは、立ち上げ期はアリです。ただし必ず"引き継ぎ期限"を先に決めてください。目安は半年〜1年です。
期限を決めない場合に起きるのは、次の2つです。
- 社長の時間が消える:AIツールの評価・社内展開・トラブル対応に、経営判断に使う時間が奪われる
- 社員が育たない:社長が全部やってしまうので、社員が「自分たちの仕事ではない」と思い込む
これは前にAIを「任せる」と「手放す」は違うにも書きましたが、同じ話です。AI推進も、いずれは手放す前提で始めるのが正解です。
推進担当を決めた後の、社長の仕事
推進担当を1人決めたら、社長がやるべきことは3つに絞られます。
| 社長の仕事 | 具体的に |
|---|---|
| 本業の負荷を減らす | 推進担当の分の時間を、本業の見積から先に差し引いておく |
| 判断の場を作る | 週1回15分、推進担当と「今週の気づき」を話す時間を取る |
| 試す予算をつける | 月1万円でいいので、AIツールを試すための小さな予算を持たせる |
金額の多寡より、「時間と判断の場」を用意することのほうが、続けられる形になります。
中小企業ならではの、いちばん強い武器
大企業には、専任のAI推進部があります。予算も人も潤沢です。ですが中小企業には、大企業にない武器が1つあります。
それは、**「社長が推進担当と、廊下で立ち話ができる距離」**にいることです。
- 「あのツール、どうだった?」と、その日のうちに聞ける
- 「じゃあ、来週から◯◯部で試してみて」と、その場で決められる
- 決めたことが、翌週から実際に動く
この意思決定の速さは、大企業には真似できません。AIを入れる話は、実は"社長と推進担当の距離"を武器に変える話でもあるんです。
AI導入を始めるときの全体像は、AI導入の「最初の90日」で、社長が握る3つの数字にも書いています。合わせて読んでみてください。
まず、ここから
推進担当は誰にするか——この1問を決めるだけで、AI導入の初速は大きく変わります。TSUNAGARU AI LABOでは、「うちの会社で誰に任せるか」の相談から、その方が実際に動けるようになるまでを伴走しています。詳しくはサービス紹介、またはお問い合わせからお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 情シスがいない会社でも、推進担当は必要ですか?
A. 必要です。ただし専任である必要はありません。「AIをまず自分の仕事で使ってみて、社内に持ち帰れる人」が1人いれば足ります。役職や部署ではなく、"手を動かせる人"を選ぶのがコツです。
Q. 社長自身が推進担当を兼ねるのはアリですか?
A. 立ち上げ期はアリです。ただし半年〜1年で必ず他のメンバーに引き継ぐ設計にしてください。社長がAI推進を握り続けると、社長の時間を奪う一方で、社員の学びの機会も奪います。
Q. 推進担当に手当は出したほうがいいですか?
A. 金額の多寡より「本業の負荷を減らす」ことのほうが効きます。推進担当分の時間をあらかじめ本業の見積から差し引いてあげるだけで、続けられる形になります。


